§東洋医学を再認識してもらうために
○ 単なる知識としてだけでなく、生活の見直し、実践に繋がるヒントを
掴んでいただければ幸いです。
○ 「どんな治療をされるか分からない」という不安が払拭され、鍼灸が
身近になることを期待します。
[ はじめに ]
◇ まず最初に、この講座の内容は全て当院長の個人的「東洋医学論」
であることをお断りしておきます。
◇ 教科書的説明は一般向けの書物が多く出版されていますのでそちら
で勉強して下さい。
◇ ここでは東洋医学の根本にあるエッセンスを現代に生きる私達に役立
てるためのヒントをお話していきます。
◇ そのため「学問的に正確な資料」ではなく、院長自身の経験や考え方
に基づくアドバイスであるとご理解下さい。
[1] 医療を取巻く現代の潮流
○ "感染症主流" の時代から "生活習慣病主流" の時代へ
・ 病原菌との長い戦いは抗生物質に代表される現代医学が効果を
収めた様です(但し、実際は楽観できませんが・・・)。
・ これまでの「原因菌を突き止め、それを駆逐する」という方法では簡単
にいかないのが今日最も問題になっている生活習慣病です。
・ 現代病に対しては方法論が問われているのです。
○ "延命" の時代から "健康寿命" の時代へ
・ 「死は避けるべき」であるから延命することが第一でした。
・ もちろん生命の尊厳において長寿であることは結構なことですが、
単に「死なない」ことだけでなく「如何に生きるか」が大切ですね。
○ "医学中心" の時代から "医療中心" の時代へ
・ 「医学」は「医療」を成立させるための重要な要素です。
・ しかし医学だけで医療が成り立っている訳ではありません。
・ 西洋医学は近代科学の手法と一体となって急速に発展しました。
確かにその恩恵で多くの命が救われ、平穏で豊かな生活を手に入れる
ことができました。
・ けれどもあまりに急激に変化してきたため、肝腎の医療の方は取り残
されてしまったのです。
・ 私達は病院へ「科学者」に面会するために出かけるのでしょうか?
・ 病のみではなくその人全体を丸ごと癒す医療が今求められています。
○ "お任せ" の時代から "主体性"
の時代へ
・ 現代人は忙しく、お金ですむなら健康のことは専門家に任せておけば
いいと考える人も多いでしょう。
・ 一方、健康産業なるものは大盛況です。
健康食品・健康グッズ・サプリetc.テレビ番組も連日取り上げています。
・ 悪くなったらその時医者に行けば良い、あるいは宣伝に乗って次々と
サプリ等を試す、どちらも結局自分の健康を人任せにしています。
・ 自分の健康には各人が主体的に責任を持つ他にありません。
そのために、自分の考えや行動の「芯」となるものを持ちましょう。
[2] 東洋医学のキーワード
○ 「天人合一思想」
:人体の形と機能が天地自然と相応しているとみる思想。
:大宇宙 と 小宇宙。
・ 人間も自然の一部であるということ。
当然なことなのに、つい忘れてしまいますね。
・ 人の内に宇宙が有るとも言えます。
○ 「未病を治す」
:疾病予防、健康保持が第一。
:養生思想。
・ 最良の医者は病の予兆をいち早くつかんで、未然に防ぐことができる。
・ これは洋の東西を問わず、医療本来の姿でしょう。
○ 「心身一如」
:心身一元論。
:心と身体の相互作用を重視。
・ 今ではストレスの影響や心療内科など、心と身体の関係が注目されて
いますが、東洋医学では二千年以上も前からこの点を指摘し治療法を
示しています。
○「病治人治」
:全人的な医療。
:病 ⇔ 人 ⇔ 環境 を繋げて全体的に考える。
・ 病はその人の生活スタイル、食生活、職業、人間関係全てを含んだ環境
を反映してます。
・ 西洋医学は臓器から細胞、そいして分子や遺伝子まで次々と微細な世界
に進んでいきます。一方東洋医学はその人を丸ごと捕らえ、その人を包む
環境まで思いを巡らせるのです。
[3] 東洋医学と西洋医学の対比
○ 東洋医学と西洋医学はお互いに補完しあうもの
・ 東洋医学と西洋医学は1つの現象を別々の角度から捉えているということ
です。
・ それらは相反するものではなく、頂上を目指すアプローチのルートの違いと
考えることができます。
・ それぞれの特徴を生かし、協調して治療に当たることでより全人的な医療が
実現されると思います。
項 目 |
<東洋医学> |
<西洋医学> |
人体観 |
有機的統一体 |
機械論的還元主義 |
基本原理 |
気 (陰陽五行説) |
化学・物理学 |
心と体 |
心身一如 |
二元論 |
診 断 |
症状の統合 |
病名診断 |
治 療 |
間接的に導く |
直接的に作用する |
回復力 |
本人の生命力 |
依存的になりがち |

 
自分自身で生み出して補う vs 外部から物質を取り入れる
< 東洋医学的治療 > < 西洋医学的治療 >
○ 自らの力で回復できるように導くのが東洋医学のアプローチ
・ 上の3つの図は夫々健康状態を表しています。
・ 1番上の図は健康が部分的に損なわれている状態を示しています。
・ 下の左側の図は自らの力で損なわれているものを補い、全体的に
健康な状態に回復したことを示しています。
・ 右側の図は不足している部分を外部から物質を取り入れることで補充し、
全体を健康な形に整えた場合を示しています。
・ この違いが東洋医学と西洋医学のアプローチの最も大きな違いです。
・ 東洋医学は間接的、西洋医学は直接的とも言えるでしょう。
「急がば回れ」と言います。遠回りのようであっても、長い目で見れば
生命力を高めた方がより根本的な解決になるはずです。
[4] 東洋医学の基本思想
○ 自然観:万物は気から構成され、気の作用によって働きが生まれる
(広義の気と呼ばれる)。「気の思想」
・ 「気とは何か」。これは難問です!
この問題については後の章で私見を述べたいと思います。
○ 健康観:気(狭義の気)の全身巡行・外界との出入に滞りや過不足が
なく、調和して運動している。
・ 「健康とは何か」。このことについてはこの講座のまとめとして皆さんと
一緒に考えたいと思います。
○ 疾病観:気の不足・停滞・偏り等の異常が通常の範囲を超えたため
生理機能に不調を来した状態
・ 日常の言葉で言ってしまえば「気の巡りが悪い」ということになります。
・ 私の持論では「循環とリズム」に問題があると思います。
・ このテーマを次の章で取り上げます。
|